大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和33年(ネ)1145号 判決 1964年4月27日

控訴人・附帯被控訴人(原告) 三嶋太郎訴訟承継人 土屋玉子 外八名

控訴人(原告) 菱田稔

被控訴人・附帯控訴人(被告) 富田林市農業委員会

被控訴人(被告) 国

主文

一、控訴人土師半六(但し、三嶋太郎よりの承継部分を除く)、同菱田稔の被控訴人等に対する訴を却下する。

二、控訴人土屋、同西川、同斯波、同三嶋ツル、同三嶋正男、同松林、同上総、同菱田田鶴子、同土師(但し、三嶋太郎よりの承継部分につき)等の被控訴人委員会に対する訴を却下する。

三、右控訴人等の被控訴人国に対する訴のうち、登記嘱託処分、登記の各無効確認、並びに大阪府知事をして登記の抹消を行わしめることを求める訴、及び別紙目録記載第一物件の(二)のうち、田一畝二五歩の買収、売渡、田五畝七歩の買収の各無効確認を求める訴は、これを却下する。

四、右控訴人等の被控訴人国に対する訴のうち、前項記載以外の訴については、その請求を棄却する。

五、附帯控訴人(被控訴人)委員会の付帯控訴を却下する。

六、附帯控訴費用は附帯控訴人委員会の負担とし、その余の訴訟費用は第一、二審を通じ、全部控訴人等の負担とする。

事実

控訴人(附帯被控訴人、以下単に控訴人と称する)代理人は、控訴につき、「原判決を次の通り変更する。各被控訴人は各控訴人に対し、大伴地区農地委員会が別紙目録記載物件に関して設定した買収計画に基く政府の買収並に売渡の各無効を確認すべし。被控訴人国は控訴人等に対し、大阪府知事が別紙目録記載物件に関して為した政府買収政府売渡の各登記嘱託処分並に各登記の無効を確認し、同知事をして各登記の抹消手続を行はしむべし。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人等の負担とする。」との判決を求め、被控訴人国代理人は「本件控訴を棄却する。控訴人等の政府の買収、売渡の無効確認を求める訴を却下する。訴訟費用は第一、二審とも控訴人等の負担とする」との判決を求め、

被控訴人(附帯控訴人、以下単に被控訴人と称する)委員会代理人は、控訴につき「本件控訴を棄却する。控訴人等の政府の買収、売渡の無効確認を求める訴を却下する。訴訟費用は第一、二審とも控訴人等の負担とする。」との判決、附帯控訴につき「原判決主文第三項を取消す。右部分に対する控訴人等の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも控訴人等の負担とする。」との判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張、証拠の提出援用認否は、

被控訴人国代理人において、自創法による農地買収は、買収という法律効果を生じさせることを目的として、市町村農地委員会、都道府県農地委員会、都道府県知事の各行政庁が独立数個の行為により段階的に形成される手続であるが、控訴人等はこれらの一連の手続を包括的に捉えて一個の政府買収、売渡なる概念を構成し訴の目的としているが、前記各行政庁の個々の行政処分のほかに、右にいうような政府の買収、売渡なる行政処分は存在しないから、これを目的とする控訴人等の訴は不適法で却下せらるべきである。仮りに控訴人等のいう買収、売渡が、本件土地に対する買収処分及び売渡処分を指すものとすれば、控訴人等のうち控訴人土師半六、同菱田稔の訴は、同人等において本件物件の所有者でないことを自ら主張するものであるから、処分の無効確認を求める原告適格を欠き、不適法の訴となる。また右両名以外の控訴人等の売渡処分無効確認の訴は、仮りにその主張通り売渡処分の無効が確認されるとしても、目的農地の所有権は国に復帰するのみで控訴人等には何等の影響がなく、訴の利益がない。また他方で買収の無効確認が認められるとすれば、売渡処分は当然無効となる訳であるから、この点からも、特に売渡処分の無効確認を求める利益はない。

右控訴人両名以外の控訴人等の当審で変更した後の買収無効確認を求める訴に対しては、第一物件の(二)の土地のうち一畝二五歩については、買収計画は存在しないのみならず、右(二)の物件全部につき、昭和三一年七月四日、買収、売渡処分を取消したから、訴は対象を欠き不適法である。

また第二物件の(三)、(四)の土地については、自作農創設のための大量的行政処分を急速広汎に施行するに際しては、個々の農地につき登記簿等の公簿以外に真の所有者を探究することは事実上困難であるから、政府が買収を行うについては、一応、登記簿等の公簿の記載に従つて買収計画を定めることは行政上の事務処理の立場から是認されねばならない(最高裁昭和二八年二月一八日判決参照)。そして右土地についての所有権の移転については、村人は勿論、小作人すらこれを知らず、また右買収について異議や訴願もなかつた状況であるから、仮りに右土地の所有者が三嶋太郎であつたとしても、その事実は処分当時に明白な事実であつたとはいえず、買収処分は当然無効ではない。なお本件買収処分はすべて登記名義人を相手方とし、買収令書も登記名義人に交付したものである。と述べ、

被控訴人委員会代理人において、控訴人等の政府の買収、売渡処分の無効確認を求める訴が不適法である理由として、被控訴人国と同一の主張を為し、なお、被控訴人委員会は、買収令書、売渡通知書の発行をした行政庁ではないから、処分庁ではなく、右の訴についての被告適格を欠く点においても訴は不適法である。また、附帯控訴の理由として、本件土地は買収計画樹立当時、三嶋太郎の所有でなく、第一の土地については控訴人菱田稔、第二の土地については控訴人土師半六がその所有者であつた。即ち、右の土地については、控訴人菱田稔、同土師半六の名義により、自作農創設維持補助規則による政府の低利資金の貸付を受けていたものであるが、昭和一三年法律第六七号農地調整法によると、政府資金貸付による自作農創設維持事業により創設又は維持せられた自作地の所有者は、行政官庁の認可を受けなければその自作地の譲渡を為し得ず、従つて右控訴人等はその所有権を三嶋太郎に移転することができなかつたもので、三嶋太郎はその後昭和二三年一二月一四日に至り、弁護士久保田美英を代理人として訴訟を提起し、判決によつて所有権移転登記をすることを図つたもので、本件買収当時の所有者は、あくまでも右控訴人両名であつて、買収計画には何等違法の点がないから、控訴人等の請求は理由がない。と述べたほか

原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

理由

一、はじめに、控訴人等の原審における請求と当審における請求との関係につき検討するに、

(イ)  被控訴人委員会に対する請求としては、原審において、

(1)  控訴人菱田稔は別紙目録第一記載土地につき、控訴人土師半六は同目録第二記載土地につき、各大伴地区農地委員会が定めた農地買収計画の取消を求め、右請求はいずれも訴却下となり、

(2)  承継前の原告三嶋太郎の訴訟承継人たる控訴人土屋、西川、斯波、三嶋ツル、三嶋正男、松林、上総、菱田田鶴子、土師半六は、同目録第一、第二記載土地につき、大伴地区農地委員会が定めた農地買収計画の取消を求め、右請求は一部は訴却下、一部は請求を認容せられたものであるところ、

当審においては

(3)  控訴人等は各、同目録第一、第二記載土地につき、大伴地区農地委員会が定めた買収計画に基く政府の買収、並びに売渡の各無効確認を求めるものであるから、

原審における右(1)(2)の請求は、当審において右(3)の請求に交替的に変更せられたもの(これについて格別相手方の異議は述べられていない)と解するの外はない。

そうすると右(2)の請求の一部を認容した原判決主文第三項は、右請求変更により、当然に失効したものと解すべきであつて、当審において右原判決主文第三項の取消を求めるために提起した被控訴人委員会の附帯控訴は、その対象が存しないから、却下すべきものである。

(ロ)  次に被控訴人国に対する請求としては、原審において、

(1)  控訴人等は各、同目録第一、第二記載土地について大伴地区農地委員会が定めた買収計画が未確定であることの確認を求め、右請求はいずれも訴却下となり、

(2)  控訴人等は各、右買収計画に基く各行政処分の執行力のないことの確認を求め、右請求もいずれも訴却下となつたものであるところ、

当審においては

(3)  控訴人等は各、同目録第一、第二記載土地につき、大伴地区農地委員会が定めた買収計画に基く政府の買収、並びに売渡の各無効確認を求め、

(4)  控訴人等は各、大阪府知事の行つた政府買収、同売渡の各登記嘱託処分の無効確認、各登記の無効確認を求め、同知事をして各登記の抹消を行わしめることを求めるものであるから、

原審における右(1)(2)の請求は、当審において右(3)の請求に交替的に変更せられたもの(これについても格別相手方より異議は述べられていない)で、右(4)の請求は追加せられたものと解すべきである。

二、そこで先ず控訴人菱田稔、同土師半六(但し、同控訴人については三嶋太郎よりの承継訴訟物を除く)の被控訴人委員会、同国に対する本件物件に関する政府の買収、売渡の各無効確認を求める訴につき按ずるに、同控訴人等の主張は、同控訴人等の各所有名義(登記簿上)の物件につき買収、売渡処分があつたが、同控訴人等は右物件の真の所有者でなかつたというのであるから、本件買収、売渡処分によつて同控訴人等は自己の所有権を害せられることのないものであることは、右主張自体によつて明らかであり、また右買収処分につき、形式上の相手方となつてその拘束力を受けることについても、これに基き何等かの実害を受けることの特段の事情は何等主張、立証がないから、本件買収売渡処分により同控訴人の害される権利は存しないものというべく、同控訴人等の右の訴は、その主張自体において、訴の利益を欠き、不適法たるを免れない。よつて右の訴は却下を免れない。

三、次に控訴人等の被控訴人国に対する本件物件に関する大阪府知事の買収、売渡の各登記嘱託処分、及び各登記の無効確認並びに同知事をして右各登記の抹消を行わしむべき旨の訴(新訴)につき按ずるに、そのうち、登記嘱託処分は、登記という権利公示手続の実現のための手段たる行政庁間の委託行為であつて、それ自体国民に対して直接の効力を生ずる行政処分に該当しないから、行政訴訟の対象となし得べきものではなく、また登記の無効確認は、その登記自体(かつては非訟行為の一種と解されたが現在の制度上は行政行為の一種と解すべきもの)は、それが表示する権利関係の実質を欠く等一定の事由の存するときは、公示(対抗要件)としての実体的効力は当然に否定される場合のあることは、勿論是認せられるところであるが、かような実質的効力を有しない登記は、本来その存在を許されず、当然に抹消を求むべきであり、従つて、その抹消を求めないままで、即ちその形式的存在を容認しながら、その効力についてのみ無効確認を求めることは、権利救済として甚だしく不徹底であつて、救済の直接性実効性の要件を充たさないものであり、また登記抹消と同時に登記無効確認を求めることについては、独立した確認の利益を認めることができないから、かような登記無効確認の訴はいずれも不適法として許容されないものと解すべきである。次に、知事による登記抹消履行の訴は、これを求める控訴人において、その目的たる登記の内容を明示しないため請求の特定性が認められないのみならず、売渡登記については、被控訴人国は現存する登記の登記権利者でないから、何れの点よりするも不適法の訴たるを免れず、却下せらるべきである。

四、よつて右以外の訴、即ち三嶋太郎の訴訟承継人としての控訴人土屋、西川、斯波、三嶋ツル、三嶋正男、松林、上総、菱田田鶴子、土師の被控訴人両名に対する別紙目録記載物件についての政府の買収、売渡の各無効確認を求める訴につき審按する。先ず、右控訴人等の請求の目的たる「政府の買収並に売渡」が、行政訴訟の対象となる行政処分に該当するか否かにつき按ずるに、右控訴人等の主張が、果して被控訴人等の指摘するように、本件土地の買収、売渡を目的とする一連の手続、処分を総括して把握し、その効力(行政処分そのものの公権的効力か、実体法上の効力かは不明であるが)を争うものとすれば、通常にいう行政処分を対象とする訴としては、これを容認することは困難であるといわねばならないが、右控訴人等の掲げる「買収並に売渡」の中には、少くとも本件土地に対する買収処分(控訴人等が原審以来その存在を主張するもの)及びこれに継続する売渡処分が含まれ、その効力を争う趣旨をも含むものと善解することができるから、以下本件申立を右のように解釈して判断を進める。ところで被控訴人等は、右の売渡処分の無効確認につき訴の利益の存在を争うので検討するに、買収処分が無効であれば、売渡処分は当然に無効となるから、訴の利益はないとの主張については、その所論は、売渡処分を無効とする理由が明白であることを指摘するのみで、無効な売渡処分であつても、外見上有効に存在するものと見られ、そのように取扱われる虞があり、これを除去する必要については、買収処分の無効確認を求める利益と何等の径庭がないから、買収処分の無効と併せて売渡処分の無効の確認を求める利益は当然に是認せらるべきであつて、被控訴人等の主張は首肯できないし、また売渡処分が無効でも目的物は国に復帰するのみであるから、訴の利益がないという主張については、控訴人等から国が取得し、第三者に移転した本件土地の所有権を回復するためには、買収、売渡の双方の処分の効力を否定することが必然的要件となるから、売渡処分無効確認を求める利益は当然に肯定せらるべく、被控訴人等の右主張は理由がない。

しかし、右控訴人等の訴のうち、被控訴人委員会に対して買収、売渡の無効確認を求める部分は、そのうちの買収計画、又は売渡計画のみを対象とするものでない以上は、被控訴人委員会はその処分庁であるとはいえないから、この点において右控訴人等の右の訴は、その相手方の適格を誤り、不適法として却下を免れない。

五、そこで被控訴人国に対する右控訴人等の本件土地の買収、売渡各処分の効力についてのみ審理を進める。

先ずそのうち第一物件の(二)(富田林市大字南大伴六九番地、田七畝二歩)については、その一部五畝七歩(分筆により六九番の一となる)のみにつき買収計画があり、残部一畝二五歩(分筆により六九番の二となる)については買収計画すら存在しなかつたことが成立に争のない乙第四号証により認められるのみならず、その後昭和三一年七月四日に至り、右土地の買収処分(買収令書)は全部取消されたことが成立に争のない乙第七号証により認められる。しかしながら、売渡処分については、成立に争のない甲第七、八号証に徴すると、それが取消された形跡は認め難いから、結局、右土地については、右分筆後の六九番の二に該当する一畝二五歩の買収、売渡処分と、六九番の一に該当する五畝七歩の買収処分についてのみは、その無効確認の訴は処分の対象を欠き又は訴の利益を欠く点において不適法といわざるを得ない。

六、そこで右以外の土地について、本件買収計画樹立当時における土地所有者の点について判断する。

右控訴人等はこの点について、右の当時の所有者は第一、第二物件共に右控訴人等先代三嶋太郎であるとするが、その所有権取得の経過については、第一物件は、三嶋太郎より昭和一三年一〇月四日に孫に当る菱田稔に所有権移転(登記済)し、同人より昭和一七年三月一〇日三嶋太郎に所有権復帰(当時未登記)したもの、第二物件は、三嶋太郎より昭和八年五月五日に三男に当る三嶋半六(後に土師半六と改姓)に所有権移転(登記済)し、同人より昭和一三年五月二三日三嶋太郎に所有権復帰(当時未登記)したものと主張するに対し、被控訴人国は、右の当時の所有者は、第一物件については当時の登記簿上の所有名義人菱田稔、第二物件については同様登記名義人三嶋半六(後の土師半六)であると主張する。そうすると、少くとも、第一物件については昭和一七年三月一〇日以前は菱田稔、第二物件については昭和一三年五月二三日以前は三嶋半六(後の土師半六)の各所有であつたことについては、当事者間に争がないことになるから、果して右日時以後に控訴人主張のように右両物件の所有権が三嶋太郎に復帰したか否かが検討されねばならないところ、成立に争のない甲第三号証の一、二と証人西村新三郎の証言、控訴人土師半六(第一、二回)、控訴人菱田稔法定代理人菱田要太郎(第一、二回)、承継前の控訴人三嶋太郎各本人尋問の結果の各一部を綜合すると、右第一、第二物件の土地は、かねてより三嶋太郎の所有であつたが、右控訴人主張のように第一物件は菱田稔に、第二物件は三嶋半六(後の土師半六)に所有権移転登記をしたもので、右所有権の移転はいずれも三嶋太郎の債務整理の都合(第一物件)、又は他人名義による金融(第二物件)という目的のための信託的譲渡であることが認められ、第一物件は菱田要太郎(稔の父で、太郎の娘婿)が貸金の担保として譲受け、間もなく右貸金は分割返済されたとする控訴人稔の法定代理人菱田要太郎(第一、二回)及び承継前の控訴人三嶋太郎の供述部分、及び第二物件は半六に対する将来の分家料として分与されたとする控訴人土師半六(第一、二回)の供述部分は、いずれもそのまま措信することができない。そして、また、右の措信し難い証人、本人の供述部分を除き、控訴人等その余の全立証に徴するも、本件買収計画中最終分の樹立当時(遅くとも昭和二三年四月二三日)までに、右第一、第二物件についてこれを三嶋太郎に所有権を復帰せしめる原因行為(信託譲渡の取戻ないし解消)がなされた確証は認められず、むしろ成立に争のない甲第一号証の一、二と前掲甲第三号証の一、二、承継前の控訴人三嶋太郎本人尋問の結果によれば、本件買収計画樹立の後においてようやく、三嶋太郎は右第一物件については売渡分の買戻、第二物件については贈与分の返贈があつたものとして(その真否はしばらく措く)、それぞれ稔又は半六を相手方として所有権移転登記請求の訴訟を提起し(原告代理人は久保田美英)、相手方はいずれも直ちに主張事実を全部認めて請求認容の判決がなされ、この判決により昭和二四年二月中に三嶋太郎への所有権移転登記がなされたに過ぎないことが認められるから、結局、本件買収計画樹立当時においては、本件物件の所有権の帰属は、その当時の登記簿上の表示通りのもの、即ち第一物件については菱田稔、第二物件については三嶋半六(土師半六)であつたものと認めるの外はない。右の三嶋太郎より、稔、半六に対する所有権移転は前認定の通り信託的なものであつたのであるから、右の移転後においても右物件の事実上の支配を三嶋太郎が有していた事実があつたとしても、この事実はいまだ右認定を左右するには足りない。そうすると、右各物件に対する買収計画樹立及び買収手続の実施については、何等控訴人等主張のような所有者誤認はなかつたものといわねばならないから、本件買収処分につき右を理由とする違法は存在せず、従つてこれが無効の主張は理由がない。そうすると、右の点を理由として売渡処分の無効を主張することも理由がない。なお、右の外、控訴人等は本件買収計画における対価の決定方法の違法を主張するが、右の事由は本件買収処分、従つて売渡処分を無効ならしめる理由となすに足りないから、深く審査するまでもなく右主張は失当であり、また各行政処分が法定要式を備えない違法があると主張するが、これについて具体的に違法の点を主張、立証しないから、右主張も採用に由がない。結局、その余の違法事由の存在はこれを認めることができない。よつて前記物件につき、右控訴人等の被控訴人国に対する買収処分、売渡処分の無効確認の請求は失当として棄却せらるべきである。

七、以上の判断に基き、被控訴人委員会の附帯控訴を却下し、当審において控訴人等の変更、追加した訴の部分(請求)は前記の通り却下又は棄却すべきものとし、訴訟費用につき民事訴訟法第九六条第九三条第八九条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 岡垣久晃 宮川種一郎 鈴木弘)

(別紙)

目録

第一、大阪府富田林市大字南大伴

(地番) (地目) (面積)

反畝歩

(一)  三四の一 田 八・二二内畦畔五歩

(二)  六九   田 七・〇二

第二、同市大字北大伴

反畝歩      歩

(一) 二九一   田   七・一九外畦畔一三

(二) 二九三   田   二・一〇外〃  二

(三) 二七〇   田   二・二九外〃  三

(四) 二七一   田   八・〇九外〃  四

(五) 一二六   田   九・二八外〃  七

(六) 四八四   田 一・〇・二五外〃  六

(七)  九六   田   八・〇一外〃  八

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例